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ミーコワールド

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3本の桜の木



   <3本の桜の木>

私の家から仕事場まで約30kmある。

その途中に桜のトンネルが2ヶ所ある。

一ヶ所は本当に見事にドーム型になっている。

もう一ヶ所も見事なトンネルである。

しかしあとの方の桜のトンネルが4~5年前から大変な事になってきて、

そのうちの3本が枯れ始めた。

今ではすっかり2本が枯れてしまって哀れな枯れ木と化してしまった。

原因はというと道路の歩道をはさんで向こう側の茶畑が盛り土をして

埋め立てられたのだ。

高さ約2m程埋め立てられた。

あっと言う間の出来事であった。

道路はアスファルトで固められ、歩道もアスファルトで固められ、

その向こう側はコンクリートの要壁で固められ、

桜の木は呼吸ができない状態になってしまった。

毎年弱っていくのが手に取るようだった。

とうとう弱った桜の木が埋め立て時の半分以下の大きさになった時、

私は何とかしてやれないものかと心を痛めた。

と、そんなある日、ふと見ると一本の桜の木の幹に榊の枝が荒縄で

くくり付けられているのが目についた。

しかも白い半紙を短冊に切って付けられていた。

神社へ行くとお払いの時に神主さんが持っているあの状態の榊の枝である。

私はそれを見て「ああ、心を痛めていたのは私だけではなかった」と

思って何となくホットした。

こんな事で効果はあるのかと思う人もあるだろうが、

なんとその桜の木は枯れるのがその日を境に止まったのだ。

あれから3年経った今ではすっかり元気を取り戻し

もうすぐ元のような枝振りを見せてくれるだろうという所まで回復している。

しかし、あとの2本は哀れな姿をさらしている。

元気になった桜の木はあんなオマジナイのような事が効いたのだ。

人によってはその木は成木だったので枯れなかっただけだ、というかも知れない。

でも葉っぱが黄ばんであとわずかで枯れるだろうという程弱っていたのだから

私の目から見ると不思議で仕方がない。

木でも植物でも動物でも愛情と思いやりで立ち直ってくれると思う私は

オメデタイのだろうか?

他の桜の木も順番に枯れるだろうと誰もが思ったはずである。

あの榊の枝を付けに来た人はきっと

「何もして上げられなけれど、もう一度元気になってきれいな花を見せておくれ」と

話し掛けたのではないだろうか。

私ならきっとそう言っただろう。

どうする術も分からなかった私には榊の枝を付けてくれた人には感謝している。

まだまだこんな優しい人がたくさんいると思うと、とても嬉しくなってくる。

「やさしい」という言葉はこういう行為をさりげなく一人で出来る人の為に

ある言葉ではないかと思う。

勇気も必要だろう。

その前にやり方を知っていなければできないだろう。

まして車の多い通りでの事だ。

どなたがして下さったのか分からないが何となく体が芯から温かくなる思いだ。

そんな思いでこの桜のトンネルを毎日通っているのは私だけではないのだろう。

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